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地域の未来が一粒に
佐那河内村のさくらももいちご

地域の未来が一粒に
佐那河内村のさくらももいちご

徳島県佐那河内村でしか栽培されていない希少ないちご「さくらももいちご」。
今や徳島から日本全国、いや世界に誇るブランドいちごとして知られています。
村では農家さんが中心となり、数量を追い求めるのでなく品質と希少性を大切にしながらブランド価値を守り続けています。
これまで歩んできた歴史と独自の取り組み、そして「さくらももいちご」の未来についてもお聞きしました(2022年2月取材の情報です)。

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徳島県佐那河内村。
徳島県唯一の村で限られた農家さんのみで作られている非常に希少価値の高いいちごが「さくらももいちご」です。

特徴としてまず挙げられるのが、その大きさ。
一粒が平均6センチ以上で、大きなものだと子どもの握りこぶしくらいの大きさのものも!
そして甘さ。糖度は平均12度以上のものだけが、さくらももいちごとして出荷されます。
さらにかぶりつくとあふれんばかりに果汁があふれるジューシーさ…。まるでジュースを飲んでいるようなみずみずしさは格別です。

徳島を代表するブランドこのいちごはどのように誕生したのでしょうか?

お話を聞いたのは「佐那河内ももいちご部会」部会長・栗坂政史さんです。

 ▲部会長の栗坂さん。とっても気さくでダンディ!
▲部会長の栗坂さん。とっても気さくでダンディ!

栗坂さんは22年前から父親とともにさくらももいちご作りに携わっています。

佐那河内村でさくらももいちごの前身となる「ももいちご」が誕生したのは1992年のこと。
JA徳島市佐那河内支所と、卸売会社『大阪中央青果』との共同プロジェクトとして開発されたのがはじまりです。
佐那河内村は盆地状で、平野部よりも日照時間が短くて昼夜の温度差が大きいという、高品質で大きいいちごを栽培するには好条件の土地柄で、昭和40年代からいちご作りが盛んな場所でした。
そこに着目して「ほかの産地では栽培していないようないちごを作ろう」と改良を重ね、誕生したのが、桃のように大きくジューシーで甘いことから一般公募で名付けられた「ももいちご」です。
当時のいちごは酸味が強く、練乳をかけて食べるのが当たり前でした。
しかし、ももいちごはそのまま食べても甘い。当時口にした人は「こんないちご食べたことがない!」と衝撃を受けていたそうです。

ブランドいちご黎明期に彗星のように現れたももいちごは、その大きさと味の濃厚さで関西の市場では徐々に評判が広がり、テレビ番組の紹介で一気にブレイク! 限定された農家でしか栽培していないという希少価値もあいまってさらなる人気を集めるようになりました。
その後、全国各地に流通するようになってから運ぶときに振動で傷がついてしまわないよう、しっかりした果肉と歯ごたえ、そしてももいちご以上の甘みと香りをもった新品種「さくらももいちご」を2008年に開発。
芯までしっかりと赤く色づいた身や濃厚な甘みが絶賛され、佐那河内村生まれのいちごの評価はさらに高まっていきました。

今ではさくらももいちごが12粒から20粒が入った箱は1万円以上で販売されているんです。なんと1粒1000円以上! “食べる宝石”ってまさにこのことですね…。
それほど値打ちのある高級いちごはどうやって作られているのでしょうか。
栗坂さんのハウスにお邪魔させてもらいました。

取材時は前日に雪が積もるほどの寒さでしたが、傾斜地に建つ栗坂さんのハウスの中はじわじわ汗をかくほどのあたたかさ。

 ▲ハウスの中はいちごの苗でびっしり。
▲ハウスの中はいちごの苗でびっしり。

大きさにこだわるため、通常のイチゴであれば1つの株にたくさんの実が同時になるところを、さくらももいちごの場合にはつぼみの状態で花を間引き、少ない実しか成らないようにしているそうです。栄養を少ない実に集中させて、大きく育てるというわけです。
通常のいちごは20~30個の実を結ぶのに比べると大幅に少ないですが、その分だけ大きくおいしくなるんです。

さくらももいちごは、地面から畝(うね)をつくって苗を植える「土耕栽培」が採用されています。
いちご狩りを実施しているハウスなど多くで取り入れられているのは「高設栽培」(溶液で栽培して大人の腰の高さくらいの台にいちごがなる栽培方法)に比べると、収穫は大変ですがその分、味が濃くおいしいいちごができるんだそうです。

さくらももいちごは大きくみずみずしいという特徴がある一方、やわらかくて痛みやすいという欠点もあるので、大きくなったいちごが地面についたり、重さで株が倒れたりしないように、地面の上に敷いたスノコの上で育てるという方法をとっています。
この栽培法に加えて温度調整、水の管理などがあり、どれも農家さんの経験と勘が物を言います。
「おいしいいちごのためには手が抜けんこと、先読みできんことが多いんよ」と栗坂さん。

こうした農家さんの努力があってこそ、今や世界からの注文が入るいちごの最高ブランドとして高く評価されるに至ったわけです。

さくらももいちごの希少性を保つため、その品質を維持するために、佐那河内村内にある「佐那河内ももいちご部会」に所属する20軒ほどの農家でのみ栽培されています。

この部会の特徴は、農家さん自身が品質審査をするというところ。

 ▲農家さんから届けられた箱をひとつずつ開封し、色や傷みがないかなどをチェックします。
▲農家さんから届けられた箱をひとつずつ開封し、色や傷みがないかなどをチェックします。
 ▲審査中の栗坂さん。その目は真剣そのもの。
▲審査中の栗坂さん。その目は真剣そのもの。
 ▲審査を通ったいちごだけが市場へと運ばれます。
▲審査を通ったいちごだけが市場へと運ばれます。

「自分たちで審査することでいいものを作らないといけないという気持ちになるから」と栗坂さんは話します。
そんな厳しさがありながら、部会メンバーはとても仲良しなんだそうです。

 ▲出荷を待つさくらももいちごの箱。
▲出荷を待つさくらももいちごの箱。
 ▲自分たちで出荷への梱包も手掛けます。
▲自分たちで出荷への梱包も手掛けます。
 ▲出荷作業も農家全員の手で行っています。
▲出荷作業も農家全員の手で行っています。

審査や出荷を全員で行うだけでなく、「よりおいしいいちごを作る」という目的のもと、肥料のやり方や土の違いについてなど情報交換も積極的に行っているそうです。

 ▲箱にも傷みにくい工夫を取り入れています。
▲箱にも傷みにくい工夫を取り入れています。

「ほかの地域と同じように、さくらももいちご農家も高齢化は避けて通れない問題。就農する若い人が興味を持ってくれたら」と栗坂さん。
そのため、佐那河内村では生産者育成などにも取り組んでいます。

村の農家さんたちの熱い想いと愛情をたっぷり受けて育った他にはないプレミアムいちご。
コロナ禍で気軽に会えない大切な人への贈り物としても利用してみませんか?

JA徳島市
南部営農経済センター
果樹選果場
徳島県名東郡佐那河内村下字中辺44-2
tel.088-679-2224