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「アワガミファクトリー」で知る
阿波和紙が紡いできた伝統と未来

「アワガミファクトリー」で知る
阿波和紙が紡いできた伝統と未来

ユネスコ無形文化遺産に登録され、世界が認める日本の伝統素材、和紙。
和傘や提灯、障子などに使われ、昔から日本人のくらしのそばにありました。

触れ合う機会は昔より減ってはいますが、その評価は国際的に高く、新しい価値を見出され、独自の進化を遂げています。

徳島が世界に誇る「阿波和紙」を作り続けている吉野川市山川町『アワガミファクトリー』で、デジタル化が進む現代だからこそ、再評価されている和紙の魅力や可能性についてお聞きしました。

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「平成の大合併」により消滅してしまいましたが、現在の吉野川市である鴨島町、川島町、山川町、美郷村はかつて麻植郡(おえぐん)と呼ばれる郡の町村でした。

名前にある「麻」とは、大麻のことで、古代忌部族と呼ばれる人々が阿波の国に入り、この地で麻と楮を植えたことがはじまりとされています。
忌部族は、麻と楮を使った織布や紙の製造方法を伝える技術集団であったとされ、一方では、朝廷の祭祀を始めとして祭具作製、宮殿造営を担った氏族であるとも言われています。

山川町忌部山にある山崎忌部神社には、天皇陛下が皇位継承に際して行う宮中祭祀である、大嘗祭で供える麻織物「麁服(あらたえ)」を織る忌部族の行事が現代でも続けられています。

忌部族の技術は、島根県の出雲大社や安房(あわ)国と呼ばれた千葉県など、日本全国の様々な地域に共存共栄の精神を持って影響を与えたと一説では言われています。

その名前の通り、和紙作りに適した山と川、自然と水に恵まれた山川町は、そのような文化の名残として寺社や古墳などを多く見ることができます。

山川町のシンボルといえば空海が修行をしたと言われる高越山(こうつざん)。
別名「木綿麻山(ゆうまやま)」と呼ばれていますが、木綿(ゆう)は梶(かじ)、つまり和紙の三大原料の一つである楮(こうぞ)を指しています。

その恵まれた自然、歴史が残る山川町の一角に、忌部の流れを組む阿波和紙を作る「アワガミファクトリー」があります。
和紙の製造には、きれいな水が豊富にあること、そして原料として使う植物が近くの山野にたくさん生育し、すぐ収穫ができることが必須で、その条件を満たした地域であると言えます。

阿波和紙は1300年の歴史があると言われ、明治時代には吉野川流域で500戸、川田川流域で200戸の紙漉きを生業とする家々がありました。
そんな和紙の一大産地であった阿波和紙も、明治から昭和への時代の移り変わりとともに洋風化の波に押され、ライフスタイルの変化で和紙の需要は激減、ほとんどの紙漉き業者が転廃業していきました。

そんな中でも唯一残った藤森家を中心に、1947年に『阿波手漉和紙商工業協同組合』が設立。さらに1952年に藤森家が法人化し、『富士製紙企業組合』を設立しました。
1989年には、阿波和紙の啓蒙と継承を目的として『一般財団法人阿波和紙伝統産業会館』を設立しました。

 ▲一般財団法人阿波和紙伝統産業会館
▲一般財団法人阿波和紙伝統産業会館

「アワガミファクトリー」は、この3法人が一体となった阿波和紙のブランド総称です。
ブランドの理念は「私達は 明日の文化と 郷土の伝統を 真心で漉き 世界に伝えます」です。
和紙の伝統文化を守り継承するだけではなく、新しい素材の作り手として、むしろ和紙を「伝統」という世界から解き放し、さまざまな技法の開発・素材の研究活動を行なっています。

「アワガミファクトリー」が主に作るのは世界のアートシーンを創る美術用和紙。
チャック・クロス、リチャード・セラ、サム・フランシス、フランク・ステラ、グレゴリー・コルベールなど、世界的に著名なアーティストの作品の支持体として使われています。
和紙の持つあたたかさ、柔らかさなど現代人の感性に訴える和紙の魅力を生かし、インクジェットプリントなど様々な現代の用途にあった紙づくりに取り組んでいます。

中でもデジタルプリント作品制作のために開発されたインクジェットプリント用和紙「AIJP(アワガミインクジェットペーパー)」はセンセーショナルな商品として知られています。

AIJPが誕生したのは19年前のこと。
当時、海外の版画工房ではジークレーやピエゾグラフと呼ばれる、版を作らないインクジェットプリントタイプの版画が始まりつつありました。
ドイツやフランスなどの美術用紙の製造メーカーが、伝統的な版画用紙にかわり、インクジェットプリント用紙の製造をはじめていました。
和紙も、薄くて強く長期保存性に優れる特性から版画用紙として海外で使われていて、インクジェットプリント用和紙の必要性を感じ「アワガミファクトリー」で研究・開発を進めはじめました。

インクがにじまず、発色性のよい和紙の開発に何度もトライアンドエラーを繰り返し、和紙の表面の風合いを残したインクジェットプリントが可能な和紙が完成しました。

発売当初は、海外での版画や、国内の国宝級の襖絵・掛け軸など複製製作が主な客層でしたが、当時世の中はカメラ市場がフィルムからデジタルカメラへの移行期で、プロ・アマ問わずインクジェットプリントを使う時代になりました。
同時に、光沢紙や印画紙が主流であった写真プリントから和紙の持つ力で写真の奥行きや柔らかさを表現できるAIJPの評価も高まっていきます。
国際的な写真家、Gregory Colbert(グレゴリー・コルベール)氏もそのひとり。
1998年から阿波和紙を作品の印刷紙に使うようになり、「阿波和紙を作る職人は世界の宝」と絶賛しています。
インクジェット黎明期からの挑戦するという新しい技術を積極的に取り入れた姿勢こそ、世界が認める製品へと導いているのです。

最近ではNew Balance『Yoshihisa Tanaka × Tokyo Design Studio cooperative research vol.02』で、和紙を用いたアップサイクルな表現の可能性の取り組みとしてNew Balanceのスニーカーの生産過程が発生するレザーの端材や端材を和紙に漉き込んだ和紙を作るなど、SDGsの観点からの紙作りのアプローチも行っています。

一方、鳴門市の大麻比古神社の御朱印用紙を麻と楮を原料として使って奉製するなど、地元・徳島への貢献も忘れていません。

また、県産のすくもを使い、1枚1枚丁寧に染めあげた阿波和紙を象徴する和紙のひとつ・藍染和紙も手掛けています。

阿波和紙の魅力をより身近に感じられる施設も運営しています。
地元の方から「和紙会館」と呼ばれる『阿波和紙伝統産業会館』は、阿波和紙の啓蒙と継承を目的として設立されました。
ここでは職人が実際に阿波和紙を作っている制作風景を見ることができます。
国内外からのアーティストを受け入れての作品制作の援助や、地元の人と交流するA.A.I.R.(アワガミアーティストインレジデンス)事業も行っています。
2年に一度開催する「アワガミ国際ミニプリント展2021」では、世界58か国・総数1821点のA4サイズの和紙を使った版画作品が集まり、一同に展示をしたことも。
施設の2階展示室では、季節により和紙に関係した展示を楽しむことができます。現在は徳島県内の小中学生を対象にした「デザインはがき展」を行っています。
また工芸やアート、和紙に関するワークショップも定期的に開催していて、作品づくりを楽しみにしている人も多いんです。

歴史ロマンあふれる場所で受け継がれてきた阿波和紙。
その魅力を見て、自分で作って感じてみてください。

▼『アワガミファクトリー』体験の紹介はコチラ
https://activityjapan.com/publish/plan/36452

▼「食」&「技」PR動画はコチラ ※音が出ます
Taste the Local Food
https://youtu.be/uw6peGrx4b0

▼Creation the Original Product
https://youtu.be/nP4vw5Zma3o

▼東部圏域の魅力的な、「食」&「技」感動体験が詰まったパンフレットのダウンロードはコチラ
https://www.east-tokushima.jp/brochure/