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徳島でおいしい浅煎りコーヒーに出会う
 
																コーヒー好きにとって、そのまちで愛されるコーヒー店に足を運ぶことは旅の醍醐味の一つ。喫茶文化が根付く徳島では、昔から深煎りが好まれており、各地でおいしいコーヒーに出会えます。一方、最近では浅煎りのコーヒーを好む人も増え、浅煎りを提供するロースターを見ることも日常的になってきました。今回は、おいしい浅煎りを提供するコーヒー店をめぐり、その楽しみ方とおすすめを伺ってきました。
老舗の懐の深さと探究心に触れる『可否庵』
									
																			 
																							1980年創業で徳島の珈琲文化を牽引してきた店の一つ『可否庵』。マスターの近藤さんは根っからの浅煎り好きで、創業当初から浅煎りを提供。今でこそ浅煎りは珍しくなくなりましたが、当時、徳島で浅煎りが飲める貴重な店のひとつでした。老舗ならではの落ち着いた空間と、付かず離れずの心地よいコミュニケーションに惹かれ、常連から若者まで幅広い世代に愛されています。
。モーニングにもおすすめ](/img_data/fe_i_361_5563.jpg) 
																							定番のブレンドは徳島の人の好みに合わせた中深煎りが中心。でも、あえておすすめしたいのはマスターが好きな浅煎りコーヒー。メニューに載っていないものも多いため、直接聞いてみると、次から次へとおすすめを教えてくれるはず。「イチオシはゲイシャという品種の豆で、コーヒーは濃くて苦いと思っている人にこそ飲んでほしい。長年この世界で働いていて、10年前にゲイシャのコーヒーを飲んだときの感動は今でも忘れられません。売るためというより、自分が楽しみたいからいろいろ買って試しています(笑)自分が感動したコーヒーをみんなにも共有したいから、ついついおすすめしてしまいます」と笑う姿から、コーヒー愛が伝わってきます。
この日いただいたのは[ペルー]のゲイシャ。昔ながらの喫茶店ではめずらしく常時3種類ほどの、さまざまな産地のゲイシャを取りそろえています。中でもおすすめなのはパナマのゲイシャ[エスメラルダ]で、「とても人気なので仕入れられたらラッキーなんですが、お店にあるときはぜひ飲んでほしいです。格段に香りが華やかですっかり虜です」と近藤さん。
 
																							可否庵
住所:徳島市幸町2-30
営業時間:7:00〜19:00(土・日・祝は〜16:00)
定休日:隔週日曜
Instagram:@coffeean1980
ウェブサイト:http://www.coffeean1980.com/
人が集い、カルチャーが生まれる『HACHIO COFFEE』
									
																			 
																							徳島市のシンボルである眉山の麓にある、一見すると民家のような店『HACHIO COFFEE(ハチオコーヒー)』。扉を開けると店主の橋本さんが出迎えてくれます。橋本さんの柔和で朗らかな人柄に引き寄せられるように人が集い、語り合い、徳島の新たなカルチャーが生まれる場所になっています。橋本さんを囲むように椅子が並び、初めてくるお客さんも常連さんも一緒になって話す姿もしばしば。「僕はスナックのママみたいな感じです(笑)」。
 
																							豆は、中深煎りのブレンドに、浅煎りはシングルオリジンをラインナップ。特に浅煎りは、酸味が際立ちすぎない、まるくやさしい、甘い後味が残るように仕上げられています。「浅煎りと聞くと、なんとなく酸っぱいイメージがあるかもしれませんが、飲み比べると酸味の質が違うんです。レモンのような爽やかな酸味から、桃のような甘い香りのある酸味もある。この違いが、浅煎りコーヒーの楽しみの一つだと思います」と橋本さん。
この日おすすめいただいたのは[エチオピア イルガチェフェ ウォテ コンガ村](650円)。初めて浅煎りを飲む人でも親しみやすく飲みやすいお味。いちごのようなベリー感のある香りが特徴で、苦味もほとんどありません。紅茶のように楽しめる一杯です。
お菓子は橋本さんのご友人から届くお菓子を提供。この日は『bake shop TAMU』の[塩チョコソフトクッキー](340円)。しっとり濃厚なチョコの香りがコーヒーと相性ぴったり。入荷するお菓子は日によって違うので、どんなお菓子があるのかは当日のお楽しみ。
「コーヒーとも、人との出会いも、全部含めてコーヒー屋さんに行くのが好き」。そんな人にぴったりの場所です。
 
																							HACHIO COFFEE(ハチオコーヒー)
住所:徳島市西二軒屋町1-48
営業時間:11:00〜19:00
定休日:金曜、その他不定休
Instagram:@hachio_coffee
徳島の日常にスペシャルティコーヒーを『トーコーヒー』
 
																							最後は、徳島のコーヒー文化に新たな風を吹き込む若き店主の元へ。ガラス張りの格子窓に打ちっぱなしのコンクリートで、肩肘張らずに立ち寄れるコーヒースタンドです。「深煎り文化の根付く徳島の日常に、スペシャルティコーヒーの魅力を広めたい」との思いで2020年にはじめた『トーコーヒー』は、県内ではめずらしく、提供する豆はすべて浅煎りのシングルオリジンのみ。
「浅煎り、と一口に言っても、産地だけでなく、生産者や豆の品種、精製方法が異なれば、コーヒーの味はまったく異なります。飲み比べてみて、“どうしてこの味になるんだろう?”と産地や生産者に思いを馳せることがコーヒーの楽しみの一つだと思います」と店主の森田さん。「コロンビア」「ホンジュラス」など、同じ産地の豆が複数並ぶこともめずらしくありません。迷ったときは[コーヒー飲み比べ](850円〜)を頼むのもおすすめです。比べてみると、香りや口当たりの違いが分かるはず。
![提供するカップにもこだわり、徳島の大谷焼の窯元[森陶器]に特注した、コーヒーの香りが引き立つカップを使っている](/img_data/fe_i_361_5571.jpg) 
																							この日おすすめしてもらったのは、[Honduras -Juan Carlos Juárez-(ホンジュラス・フアン・カルロス・フワレス)](950円)。華やかな香りに、滑らかな質感、そして甘く続く余韻にうっとり。なかなか市場に出回らない貴重な豆なんだとか。
コーヒーと一緒にいただきたいお菓子は妻の西谷さんが担当。この日はシナノリップを使った[りんごのタルト](450円)がお目見え。「できるだけ地のものを使いたい」という思いから、県産の米粉を使ったグルテンフリーのお菓子も並びます。季節を感じるデザートのほか、焼き菓子など、日によってラインナップはさまざま。
「お子さまとも一緒に気軽に来てほしいです」と、小さなお子さんの子育て真っ最中のお二人。「こんなコーヒー屋さんがまちにあるとうれしい」と、通いたくなる場所です。
 
 
																							COFFEE TO(トーコーヒー)
住所:徳島県徳島市城東町1-1-12
営業時間:12:00〜22:00(土・日・祝~18:00)
定休日:月・火曜(祝日の場合営業)、その他不定休
Instagram:@tocoffeeto
ウェブサイト:https://coffeeto.stores.jp/
どのお店もハンドドリップで丁寧に抽出してくれるので、ドリップの合間に店主と話すのも楽しいひととき。皆さん口をそろえて「ドリップ中に話しかけてもらって全然大丈夫ですよ!」とのこと。訪れた際は、豆や淹れ方について気軽に聞いてみてください。
 
各店、豆はなくなり次第終了して入れ替わるので、その時々の出会いを楽しめます。徳島のお気に入りの一杯を、ぜひ見つけてみてください。



