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美しく、愛おしい
「コユメヤ」で知る古い物との暮らし

美しく、愛おしい
「コユメヤ」で知る古い物との暮らし

時を経て、人から人へと新たな命と役割を吹き込まれ使われている古道具、古家具。
深い色合いや傷み、錆び。
長い時間を経たからこそ醸し出される独特の空気感や佇まいは、かっこいいインテリアとして空間のアクセントになります。
たくさんの物が作られて消費されていく中、物と長く付き合い、愛していきたい。
そう思う人にぜひ知ってほしいお店が徳島市にあります。
幅広いファンを持つ『コユメヤ』さんで古家具・古道具の魅力についてお聞きしました。

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お土産 アート・工芸


徳島市北沖洲の道沿いに見つけた大きな倉庫。

ここが、明治から昭和初期までの日本の家具や小物を扱う『コユメヤ』さんです。

お店にはアンティークな風合いが好きな若者から骨董好きのマニアな人、県外からは同業者も商品を見にやって来るそうです。

店内には食器棚にガラスケース、掛け時計、器、かご、ちゃぶ台などが並びます。

絵本や昔のテレビドラマやアニメの中で出てくるような、かわいくてかっこいい雑貨に囲まれていると、なんだかタイムスリップしたような気分になります。

時間だけが出せる味わい、昔の職人の技が生きたデザイン。
戦前の家具はどれもその家に合わせてしつらえられているそうで、今ではなかなか手が出せない良質な素材で造られていることが多いそうです。それを知る人は『コユメヤ』さんの実用的な価格に驚くはずです。

「日本の木材で作られている物は、やっぱり日本の気候に合うんよね」と話すのはオーナーの小野敦史さん。

元々、内装職人だった小野さんは、古くなった家具や道具が捨てられていく様子を見て「まだ使えるのにもったいない」といつも感じていたそうです。
また、古い物が好きだったこともあり、17年前に『コユメヤ』を開店しました。

小野さんは査定して買い付けするために、県内のみならず関西や中国地方にも足を伸ばすといいます。
古い家や蔵を解体するときなどに呼ばれることが多いそうで、現場では役目を終えて廃棄されるしかない小物や家具を救出し、想いのある持ち主には驚き喜ばれることもあるそうです。
「神戸や大阪の家具は装飾が多くて都会的。徳島はシンプルな物が多い」と教えてくれました。
今まで買い付けた物で印象に残っているのは「たばこの陳列台」。戦前にはたばこは高級な嗜好品であったため、陳列台には華美な装飾が施されていました。木工技術の高さを伺うことができ、かっこよさが匂いたつようだったといいます。

そのほか、本体は使えなくても取っ手や引き出しなど、部品だけを買い取ることもあります。「パーツ一つとっても陶器や真鍮製だったりと、味があってなじむんよな」と長年ストックしてきた昔のパーツコレクションを見せてくれた小野さん。

持ちかえった家具や生活道具のほとんどは手を加えてから店に出します。といっても、見た目や機能を元通りに修復するわけではありません。
「家具職人ではないから、大がかりな修理はできない。オリジナルの雰囲気を残しながらも、元の木の風合いを出すためにヤスリをかけたり、壊れたパーツを付け替えたり。直すというより装いを整えていくという感じやね」。
小野さんの愛情あるリペアによって、古道具や家具はどんなふうに息を吹き返すのかを見せてもらいました。

これは、無垢材で造られた本棚とケヤキでできた壁がけのゼンマイ時計。どちらも県内の古い家屋から出てきた物です。

時計の割れたガラスを取りだし、壊れたゼンマイを取りだし分解します。「こういう時に出た部品は取っておくことが多い」と小野さん。

高圧洗浄機で丁寧に洗っていきます。長年降り積もったホコリなどはここでしっかり流しておくよう、入念に作業します。

独自に配合した木材を傷めない洗剤を使い、表面の塗装を落とします。当時の塗装は弁柄や柿渋などで、木部を着色保護していることが多いそうです。

約1時間、日光に当ててしっかりと乾かしていきます。できるだけ短時間で乾かさないと材質を傷めるので、作業は天気の良い日を選んで行います。

本棚の枠のサイズに合わせてガラスをカットし、入れ込みます。ガラスも戦前に作られた物を使っています。

時計の木枠や本棚の表面にヤスリをかけていきます。木のささくれを防ぐとともに、元の自然な風合いを引き出していく作業です。

時計のムーブメントは現在の生活でも使いやすい電池式に変更することに。新しい時針・分針に付け替えて、再び時を刻み始めます。

本棚は回収時に扉のつまみが取れていたので、新しいつまみをつけます。実際に合わせてみながら選んだのは白い陶器のつまみ。

そして完成したリペア後の本棚と時計です。

どうですか? 日々の生活が少し豊かに心地よくなる、そんな空気を纏っていますよね。

捨ててしまうだけが、道具や雑貨のたどる運命ではありません。
元通りにするのではなく、手を加えて味わいをもたせる。
そんなアレンジが楽しめるのも古道具・古家具ならでは。

古い物との出会いは一期一会。
『コユメヤ』に訪れることで、一生ものの素敵なアイテムに巡り会えるかもしれません。

コユメヤ
徳島県徳島市北沖洲3-171-3
tel.0120-586-529
営/13:00~18:00
休/水曜
P/あり
HP/https://www.instagram.com/koyumeya/