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徳島の職人たちだから生み出せた
高度な技術の集大成「舞工房」

徳島の職人たちだから生み出せた
高度な技術の集大成「舞工房」

職人技-。
辞書でその言葉をひくと「熟達した職人のなせるわざ。 秀でた職人だからこそできる技。 職人芸。」と出てきます。
その言葉通りのものが、ここ徳島にあります。
『多田銘木塗装』代表・多田正義さんを中心とした職人グループ「舞工房」。
「徳島にしかできない本当に良いものを作る」ということをコンセプトに、さまざまな商品を開発・販売しています。
新型コロナウイルス感染拡大により、これまでのPR活動がままならない中でも新たな作品への挑戦を続けています。
そんな「舞工房」の歩みと、これからについて多田さんにお話をお聞きしました。

アート・工芸 伝統・文化


徳島市北山町下田尻にある『多田銘木塗装(ただめいぼくこうぼう)』。
住宅や店舗用の特注家具・建具の塗装を手がける会社です。

この道約60年の職人である多田正義さん、会社の代表である傍ら、もうひとつのグループのリーダーとしての顔を持っています。

職人グループ「舞工房」。
徳島県の塗装、ろくろ、彫刻、家具製造などを専門とする職人約20人からなるグループで、それぞれの仕事を持ちながら商品の開発や製造で協力しながら作りあげた商品を「舞工房」のブランド名で発表しています。

それぞれの職人の技術に、多田さんの塗装技術を組み合わせるのが特徴のひとつつとなっています。

職人による作品、というとひとりでコツコツと作り上げるイメージを持っていましたが「舞工房」の場合は複数の職人の手によって生まれます。

これまでに作った商品をご紹介しましょう。

藍の染め物で表面を飾った遊山箱。「舞工房」を代表する商品です。

徳島の地場産業の木工と藍染とのコラボレーションにより生まれた商品です。

藍染作家・原田史郎さんの藍染布を遊山箱に貼り、多田さんのセラミックコーティング技術を施しています。

藍の持つ美しさを光沢とともに引き出しながら、セラミックを使っているため耐熱性にも優れているのが特徴です。
「食器洗い乾燥機に入れても大丈夫なんですよ」と笑う多田さん。

お重のようなタイプの遊山箱もあります。
おかずやお菓子を詰めるだけでなく、購入した人によっては釣りで使うウキやジュエリーを入れて使うこともあるんだそうです。

こちらは、藍で染めた木の食器。

ロクロによる板目刳りで年輪のような横模様を浮かび上がらせています。
天然木の独特な模様とオリジナルのグラデーション加工の藍色が融合した、他にはない逸品。

「展示会でも、生活に必要なものがよく売れるんです。普段使いできるお皿やカトラリー、コップなどが人気ですね」。

商品によって塗装方法は変えていますが、大切にしているのは「素材をどう活かしたら美しいものになるか」だと多田さんは話します。
「塗装は化粧。貴重な材料を美しく魅せるためにはどの技術・樹脂を使うべきかを意識しています」。
シンプルな佇まいの中に高級感があり、存在感はありつつも日常にフィットする。そんなアイテムになっています。

独特の風合いを「空と海」と表現し、徳島の伝統工芸の世界観を幅広く伝えることにも苦心しているそうです。

藍のコップは、もともと1個で販売していたそうですが、ペアカップとして販売したところ大ヒット。結婚祝いなどにもぴったりですね。

こちらが最新作であり、イチオシの「藍包丁」。

新しい機能性とビジュアルを搭載した「藍包丁」は県を飛び越えたコラボレーションです。

刃は日本刀をルーツに600年の歴史を誇る、和包丁の一大産地である堺の老舗が製作、柄や鞘の木材は徳島の職人が藍で染め食品衛生法適合の防水コーティングで塗装しています。

こちらは日本を代表する鍛冶職人・福井県の黒崎優氏による「藍包丁」。

刃も鞘も独特でやんちゃなビジュアルの包丁に藍のシックな色合いが見事に融合しています。

どこか中世の騎士が持つような洋刀を思わせ、どこにもない趣がたまりません!

「ひとつの製品で複数の産地に利益を生み出す」というテーマのもとで生まれた和包丁は、日本だけでなく世界中の星を持つシェフたちからの問い合わせやオーダーが殺到しているそうです。

見た目だけでなく、使うことでその真価をより発揮する「舞工房」の商品たち。

写真で紹介したもの以外にも盆栽用の飾り棚や間伐材で作ったテーブル、洗面所用に耐水性を持たせた木製ボウルなど商品のバリエーションは実に多彩。

ひとつの作品に対して関わる職人は3、4人。
「一人で作るものはマネされることもありますが専門職人が分担して作っているとなかなかマネできない。これがポイントですね。」
他にはマネできないオリジナリティあふれる商品の噂は徳島を超えて、全国各地でも展示会の誘いが増えていきました。
藍特有の風合いや手触り、そして職人目線で語る多田さんのトークに触れ、「舞工房」のファンは増えていくばかり。
また全国ネットの職人を紹介するテレビ番組でも取り上げられ、「舞工房」の販路はますます広がったのです。

しかし昨年、新型コロナウイルスの感染拡大により事態は一変します。

「舞工房」の常設展示をしていた藍住町「藍の館」が長期休業に。また全国の展示即売会も次々に中止となっていきました。

「本業の塗装の方もコロナウイルスの影響を受け、なかなかしんどい毎日が続きました」と多田さん。

が、その中でも「舞工房」の活動がストップすることなく少しずつでも商品を販売できていたのは多田さんによる種まきがあったからでした。

交流を続けていた薬局経営者の口添えで東京『GINZA SIX』での販売がはじまるなど、新たな場所での販売ルートも確保していました。
「他業種と交流を持つことはほかの人には意味があるのかと止められましたが、種まきを辞めませんでした。職人たちの10年後のことを考えていたら、新しいことに挑戦していなかいといけないと感じていたからです」。

それは職人でもあり、プロデューサーとしての多田さんの考えがあってのことでした。

多田さん自身も現役の職人として、塗装技術の進歩をキャッチし研究を続けています。
「職人たちが培ってきた技術を途絶えさせないためにも、職人自らが動く必要があると思うんです」。
そう強く話す多田さんには、「舞工房」としての夢もいくつか持ち、それを叶えたいと精力的に活動しています。

「ひとつは古民家ギャラリーを作ること。私の実家が竹林の中にあるんですが、非常に風情があってね。そこに作品をならべて購入できたり、お話ができたりするといいなと思っているんです」。

ネット販売もしていない分、直接会って作品のことや徳島の職人について広めていきたいと多田さんは話します。

また今後作りたいものを聞くと「日用雑貨かな?」と笑います。
「東京や世界で10万円もする茶こしや高い万年筆が売れているんです。それに匹敵するような長く、毎日使えるものを作るためには職人の一流の技術力が不可欠です」。

経験と引き出しの多さが問われる職人。
多田さんにとって職人とはどんな人のことなのでしょう。
「作れないと言わないこと。僕は、それはできないという職人がいたら意地でも作らなあかんと叱りますよ」。

「徳島にしかできない本当に良いものを作る」。
そのコンセプトにぶれることなく、コロナ禍でも「舞工房」の未来に向けて歩みを続ける多田さん。

徳島の職人のために切り開く未来は、藍の美しさが封印された製品のように輝きを失うことなく広がっていくはずです。

別注家具・特殊塗装・企画・開発
舞工房/多田銘木塗装
徳島県徳島市北山町下田尻14-3
TEL.090-4330-7169