特集

ぞめきが響く、徳島の夏が帰ってきた。

ぞめきが響く、徳島の夏が帰ってきた。

400年の歴史を持ち、世界にもその名を知られた阿波おどり。
徳島市では毎年8月12日から15日まで4日間にわたり阿波おどりが開催され、期間中は中心街一円が“ぞめき”と呼ばれるお囃子が鳴り響き、興奮のるつぼと化します。
2020年、新型コロナウイルスの影響により戦後初めて開催中止が決まりました。
そして今年。あわぎんホールでの前夜祭と選抜阿波おどりだけという条件で「ニューノーマル阿波おどり」が開催されることとなりました。
2020年の中止について、そして2年ぶりの阿波おどりに向けて。
徳島を代表する阿波おどり連のひとつ「阿呆連(あほうれん)」さんの練習にお邪魔して話をお聞きしました。
(※取材は6月中旬に行いました)

伝統・文化 歴史


2021年、動き出した阿波おどり

6月中旬の夜19時。
あわぎんホール前の県民広場におそろいのポロシャツを着た人たちが集まってきました。

背中に書かれたAHOU-REN CREWの文字。

そう、ここで阿波おどり有名連・阿呆連(あほうれん)が練習を行うのです。

「阿波おどり振興協会」に所属する阿呆連は1948年に結成。
肩に染め抜かれた破れ傘を描いた浴衣が連のトレードマークです。

 (写真提供:阿呆連)
(写真提供:阿呆連)
 (写真提供:阿呆連)
(写真提供:阿呆連)
 (写真提供:阿呆連)
(写真提供:阿呆連)

阿波おどりの三大主流の一角「阿呆調」、そして鳴り物の礎となる「正調阿波ぞめき」を築き上げ「現代の阿波踊り界の先駆者」としても知られています。


練習がはじまる前、マーカーコーンがならべられていきます。

「阿波おどり振興協会」は独自に作成した「阿波踊り活動再開における感染予防対策ガイドライン」を作成。
所属する連はそれを参考にしながら、安心・安全な阿波おどりを目指して試行錯誤しながら練習を再開しているのだそうです。

鉦・三味線・太鼓そして笛の音が響き、いよいよ練習がはじまります。

鳴り物の皆さんも、距離を保ちながらぞめきを鳴らします。

ソーシャルディスタンスを保ちつつ、それぞれが足の運びを確認していきます。
踊れなかった昨年の夏のことを噛みしめるように。

ぞめきのテンポに合わせて、踊り子たちの手もあがっていきます。

「チャチャン、チャン!」の音でいったん休憩。
かけ声も出さない、コロナ前とは全く違った練習。
それでも、汗をぬぐいながら休憩を取る踊り子さん、鳴り物さんの表情はどこかほっとしたように見えます。


「阿波おどりは、生きがいなんです」

想像もしなかった2020年、そして迎えた2021年。
「私たちは踊るっちゅうことに生きがいを感じとるんですよ。阿波おどりがないと決まった去年は、大事な大切なものが欠けたような気持ちでした」。
阿呆連を率いる連長・森一功さんは去年のことをこう振り返ります。

「去年はほんまに、なんにもやってない。できない1年でした」
今年になって、やっとイベント出演などで阿呆連に声がかかるようになってきたんだそう。
2021年に阿波おどりが開催されると聞いたときのことを尋ねると「出ない、やらないという連もたくさんあるんです。でも、我々阿呆連は参加する!と手を挙げました」。
阿呆連の連員の、そして自分自身の踊れなかった1年のことを思えばこそ、出演しかない。そう決めて練習をスタートした今、感じることは?
「集まってくれたみんなの笑顔を見て、胸にジーンときます」。去年のことを話す厳しい表情と打って変わり、そう話してくれた森さんの顔もほころびます。

「これからいろんなことを探りながら進んでいくしかない。通常のお盆だったら140人以上集まってくれるところだけれど、今年はコロナ禍での開催ともなり、連員それぞれの事情もあることから、40名くらいになるかなと思っています」。

阿呆連の代名詞といえば、豪快で迫力のある踊り。

「それを目当てに来ていただくお客さんの期待を上回るような踊りを見せたい。少ない人数と決められた条件の中で、今までのような演出はできないかもしれない、阿呆連はその時代時代に合った演出も考えてきたので今年はどんな演出をしようかと考えています」。

「見てくれる人に楽しんでほしい」

副連長のひとり、宮村憲志さんは阿呆連に入って30年になります。

踊りとともに歩んできた人生で、踊れない年は去年が初めてだったと語ります。
「僕らからしたら、春にはなはるフェスタがあって、ゴールデンウイークが終わったら夏の練習を初めて、お盆に本番を迎えてようやく1年が終わるという感じなんです。阿波おどりは生活の一部。2020年は心にぽかんと穴があいたような、1年が終わっていないなと感じていました」。
今年の阿波おどり開催の一報を聞いたときは「ああ、やっと踊れるんだと思いました」と笑顔を見せる。
しかし、副連長として練習を実施する中で、コロナ対策に頭を悩ませることが多いと言います。
「新人の子に声を出したり、手を取って教えるのも出来ない。鳴り物も音を出すのが難しい。大人数だから密にならないようにというのも気をつけて、考えたのがサッカーのようにマーカーコーンを置いての練習だったんです。最初はマスクをして踊ってもいたのですが、酸欠になってしまうし…。問題点は多々ありますね」。

それでも、阿波おどりならではの、阿呆連ならではの踊りを見せたいのだと話します。
「やっと今年踊れる機会が出来たんです。その気持を見ていただける方に伝えたい。見ている方も楽しい気持ちになれる踊りを披露したいですね」。

「しっかり対策をして音を響かせたい」

阿波おどりのメロディの要である篠笛。
川口朋子さんは阿呆連の笛を担当して28年を迎えます。

「笛は絶対に飛沫が飛んでしまうもの。屋外ではありますが、一通り音を出し終えたら笛を袋に入れるようにするなど、対策に神経を使っています」。
通常のマスクが着けられない笛の演奏。どうすれば練習ができるかと考えていたところ、歌舞伎のお囃子の人から教わったのが、写真のような方式。
「手ぬぐいに紐を通して着用しているんです。笛を中に差し込むだけなので、スムーズに笛を口に運ぶことができます。笛の空気が抜ける部分に布がかかってしまうと音が出なくなるので、空間を作るためにワイヤーを使ったりとそれぞれが工夫しているんですよ」
通常であれば阿呆連の篠笛は15名ほど。今年は数人が出るくらいじゃないかなと川口さんは話します。
「私自身も仕事との兼ね合いもあって今のところは出る予定はありません」
出演しなくても、連のガイドラインを会社に提示して練習に参加しているという川口さんは、来年こそは演舞場で笛の音色を響かせたいと思っています。
「協会に所属する他の連も、協会が作成したガイドラインをもとに、練習を行っていると聞きます。阿呆連一人ひとりも感染予防対策の問題意識を常に持ちながら練習に取り組んでいます。皆で話し合いながら試行錯誤したこの時間が、きっと来年により強い絆になって表現できるんじゃないかと思います」。

withコロナでの阿波おどり

それぞれが不安と悩みを抱えながらも、踊れることへの幸せを表現したいと意気込んでいるのを感じました。

今年は難しくても、きっと来年は。

なにより、徳島県の郷土芸能である阿波おどりを残すために、歩みを止めないという選択をした阿呆連の皆さん。
2021年の阿波おどりは、屋外での開催を断念し、あわぎんホールで前夜祭と選抜阿波おどりだけを開くこととなりました。

来年こそは、いつものような夏に。
その期待を込めて、withコロナ時代の踊りを披露する舞台に向けて、今日も阿呆連の皆さんは前を向いて進んでいます。

始動 ~変わらない夏への想い2021~
動画/https://youtu.be/DWLMMQYsCck