吉田類の裏通りで一献

公開日:2023/5/15

吉田類の裏通りで一献

四国の玄関口となる徳島県東部の夜は特別だ。表通りに、裏通りに、一見さんでもあたたかく迎えてくれる。味な店があり、うまい酒と料理、そして人情… 四国特有のお接待文化から生まれたおもてなしがある。まずは一献、味な夜に「カンパイ徳島」!

「茶柱通り」の中ほど、距離感の心地よさは小さな店ならでは

吉田類の裏通りで一献 「茶柱通り」の中ほど、距離感の心地よさは小さな店ならでは 酒場は人と人の縁を結ぶ場所
徳島では「ちっか」と呼ばれる竹ちくわ。 スダチをキュッと絞ってがぶりとかじる。

駒形こぢんまりとした飲食店が軒を連ねる「茶柱通り」と名付けられた裏小路。長さは50mほど、道幅は2mもない通りの「小料理 まわり道」の看板に明かりが灯った。

「懐かしいなぁ、前に来たのはいつだっけ?」。暖簾をくぐるなり、店内を見渡す吉田類さん。

「2014年にお見えになられました。確か駅前で飲まれて、はしご酒でうちに立ち寄ってくださったんですよ」と答える女将の千頭敦子さん。 長旅で疲れた体を癒すべく、まずは生ビールで喉を潤す。

「さぁ、何を食べようか」とカウンターに並んだ大皿料理を品定め。 「大皿料理、最高だよね。まずお腹を落ち着かせて。
それからじっくりと肴を吟味する。それが楽しいんだよ」。徳島に来たらやはり魚、とばかりにヨコ(黒マグロの幼魚)の刺身。 またこの日は鯖好きの類さんのために、女将さんは新鮮な鯖を調達していた。「うちのしめ鯖は、酢で締める時間がとても短いの。 刺身のような味わいなんです。召し上がりますか?」。
女将さんの問いかけに、類さんはもちろん頷く。「僕は酒呑みだけど、肴と一緒に呑むのがいいんです。 そしてもう一つ、出会いと会話を楽しむのが流儀」。類さんは「酒縁」という言葉を好んで使う。

酒が結ぶ縁。小さなお店だけに気づけば女将だけではなく、相客とも会話が始まり、しっかりと縁が結ばれていた。

吉田類の裏通りで一献 「茶柱通り」の中ほど、距離感の心地よさは小さな店ならでは 徳島では「ちっか」と呼ばれる竹ちくわ。 スダチをキュッと絞ってがぶりとかじる。

徳島の酒席につきもののスダチは酒を進ませる名脇役

吉田類の裏通りで一献 徳島の酒席につきもののスダチは酒を進ませる名脇役

FMラジオのレギュラー番組をもつ類さんは、四国にも定期的に訪問し、何度も徳島で飲み歩いてきた。
「徳島では、刺身でも揚げ物でも必ずスダチをかけて食べるんですよ。香りが良く、口の中をさっぱりとさせてくれる。お酒を進ませる名脇役です」 と言いながら、ヨコの刺身やしめ鯖にキュッとスダチを搾る手つきが様になっていた。

もはや日本全国に行きつけがある類さんだが、初めての街では裏通りをぶらりと歩く。「裏通りには、この店のように素敵な店が隠れているんです。 大抵が小さな店で、カウンターには常連さんが座っていて。旅人であるはずの僕が、いつの間にか馴染んでいる。それが最高なんです」。 口開けはビールを飲んでいたが、いつの間にか徳島の地酒に鞍替え。

酒の瓶をしげしげと眺め、「熱燗とぬる燗の間、チュー燗でお願いします」と ジョークも冴え渡り、相客と何度目かの乾杯。類さんの馴染みぶりは、古くからのおなじみさんのよう。

「徳島は、酒も肴も人もいい。 まだまだ名残惜しいけれど、次の店に移動しますか」。次の止まり木を探して、裏通りに消えていった類さんだ。

吉田類の裏通りで一献 徳島の酒席につきもののスダチは酒を進ませる名脇役
類さん流のスダチの搾り方は「スダチ45度」。半割にしたスダチを45度に傾け、指で挟んで搾る。 スダチの果汁が飛び散りにくく、皮から出る香気も楽しむことができるのだ。
吉田類の裏通りで一献
吉田類の裏通りで一献
吉田類の裏通りで一献

【今回訪れたお店はこちら】小料理 まわり道

吉田類の裏通りで一献 【今回訪れたお店はこちら】小料理 まわり道 手の込んだ料理に惹かれる人多数
手の込んだ料理に惹かれる人多数


開業は1991年。6年前、店の常連だった千頭敦子さんが初代から店を引き継いだ。 「名物卵焼きなどは、先代にレシピを教えてもらいました」と敦子さん。
変わらぬ味を大切にしながら、自分流の料理にも挑戦し、お客さまを喜ばせている。敦子さんの穏やかな人柄もあり、 女性1人でも気兼ねなく訪ねられると評判。2階にある座敷は宴会予約のみ対応。

DATA
TEL 088-655-4405
住所 徳島市鷹匠町1-20
営業時間 18時~23時
定休日 日曜
予算 3,000円~