特集

シーズンオフこそオススメ
冬の鳴門でアウトドアを楽しもう!

昨年末の紅白歌合戦はご覧になりましたか?
徳島県出身の米津玄師さんがテレビで初めて生歌を披露して話題になりました。その舞台となったのが鳴門市にある大塚国際美術館。この放送以降、大塚国際美術館には米津さんが歌ったシスティーナ・ホールを一目見たいという人が数多く訪れ、ファンにとっては「聖地」となっているそうです。

鳴門に来たなら、渦潮と大塚国際美術館はぜひ見てもらいたいスポットです。
(広大な美術館をゆっくり楽しもうと思ったら、丸1日は十分にかかります!)
そして時間が許すなら宿をとって、あと半日だけ鳴門を楽しんでください。大塚国際美術館のある大毛島(おおげじま)周辺は、美しい自然の中で海と共に生きてきた人々の暮らしをアウトドアスポーツを楽しみながら感じることができるスポットなんです。

今回ご紹介するのはシーカヤックとサイクリング。ゴールデンウィークから夏にかけては大人気で、たくさんの人が訪れています。でも、僕がオススメするなら絶対に11月から3月末までのオフシーズン。

その理由はこれからじっくりご説明します。

文・仁木啓介(映像クリエイター)

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スマホひとつで鳴門をぐるっと!「くるくるなると周遊デジタルチケット」を使ってみました
https://www.east-tokushima.jp/feature/detail.php?id=139
ぶらっと徒歩で行く鳴門大麻散策
https://www.east-tokushima.jp/feature/detail.php?id=70

アクティビティ グルメ 自然


初心者でもすぐに楽しめる
シーカヤックで小さな冒険の旅

今回、鳴門のアウトドアガイドをお願いしたのは、この地で25年間カヤックとサイクリングのツアーをしているショップHORIZON(ホライゾン)の尾崎志郎さん。鳴門で生まれ育った尾崎さん。鳴門の自然はもちろん、歴史やグルメ情報などもいろいろ教えてくれます。

 HORIZON代表の尾崎志郎さん
HORIZON代表の尾崎志郎さん

そして、旅の体験をしてくれるのが、徳島在住の仲良し3人組。

 左から前川雄紀さん、木村恵理さん、竹永耕輝さん
左から前川雄紀さん、木村恵理さん、竹永耕輝さん

3人では夜の街で遊ぶことが多いそうですが、アウトドアも大好き。木村恵理さんは子供の頃から家族でカヤックを楽しでいたそうです。前川雄紀さんはカヤックは2回目。バーテンダーをしているという竹永耕輝さんはカヤック初体験です。

ガイドの尾崎さんのイチオシはシーカヤック&サイクリングで鳴門の海を楽しむツアー。最近はあまり体を動かしていないと言う3人のために、3時間で両方を楽しむ半日ツアー(8000円〜)を体験することになりました。

 カヤック&サイクリングの半日ツアー。コースは希望に合わせて尾崎さんが提案してくれる
カヤック&サイクリングの半日ツアー。コースは希望に合わせて尾崎さんが提案してくれる

まずは上の地図をご覧ください。淡路島から橋でつながっている鳴門市。実は最初に上陸するのが大毛島(おおげじま)という島なんです。そして隣にある島田島との間にあるのがウチノ海とスクノ海。激しい潮流で知られる鳴門海峡とは打って変わって、静かで穏やかな内海です。撮影の日は少し風が強かったので、一番穏やかなスクノ海でカヤックをすることになりました。

 まずはパドルの使い方の講習
まずはパドルの使い方の講習

シーカヤックのルーツは北極圏で暮らすエスキモーたちが狩りをしたり、荷物を運ぶために使っていた船でした。極寒の海で使えるように、くり抜いたコックピットから腰まで船の中に入り、水が入ってこないようにカバーをつけます。だから足元は想像以上に暖かです。その上、安定性が抜群にいいのでよっぽどのことがない限り転覆することはありません。冬の海こそカヤック本来の性能が発揮される場所なんです。

 講習を終えたらすぐに出航。カヤック経験者の木村さんは一人乗り
講習を終えたらすぐに出航。カヤック経験者の木村さんは一人乗り
 二人乗りは安定性が抜群。2人の息を合わせるのがポイント
二人乗りは安定性が抜群。2人の息を合わせるのがポイント

スクノ海は波もなく絶好のコンディション。水深が浅く、水が綺麗なので海の底がよく見えます。これがシーズンオフの冬をオススメする第一のポイントです。

尾崎さん「冬は水が綺麗なんですよ。この透明な海をぜひ見て欲しいんです」

 水深の浅いスクノ海。冬なら海の底まで綺麗に見える
水深の浅いスクノ海。冬なら海の底まで綺麗に見える

カヤックを漕ぎ出すと体がポカポカしてきます。水面を走る爽快感はサイコー。

「気持ちいいー!」

思わず歓声がこぼれます。

 普段は味わえない水面を走る爽快感
普段は味わえない水面を走る爽快感

しばらくして見えてきたのはウチノ海とつながる水門です。水門をくぐって少しだけウチノ海をのぞいてみることにしました。

 ウチノ海とつながる水門をくぐる
ウチノ海とつながる水門をくぐる
 ウチノ海に出ると視界が一気に広がる。奥に見えるのは鳴門大橋
ウチノ海に出ると視界が一気に広がる。奥に見えるのは鳴門大橋
 かき養殖のいかだがいくつも並んでいる
かき養殖のいかだがいくつも並んでいる

ウチノ海に出ると急に潮流が変わり、流されやすくなりました。でも、ガイドの尾崎さんが海の状況とお客様のレベルを考えてコースを考えてくれているので安心です。今日のカヤックはここまで。風景を楽しみながら、のんびりスタート地点に戻ることにしました。

尾崎さん「どう?海の上は意外と暖かかったでしょ」
3人「全然寒くなかった!サイコーの気分でした」

海岸線をどこまでも走れる
ファットバイクでサイクリング

尾崎さんのショップHORIZONまで車で移動し、次はサイクリングです。3人に貸してくれたのはタイヤが普通の自転車の倍以上もあるファットバイク。

 タイヤの迫力に注目度抜群のファットバイク
タイヤの迫力に注目度抜群のファットバイク

ファットバイクは冬、雪や氷の上でも走れるように開発された自転車です。太いタイヤが地面をしっかりグリップするので、雪の上はもちろん、砂利道や砂浜でも走ることができるそうです。

その無骨なスタイルとは裏腹に、走り出すと乗り心地がソフトでびっくりです。太いタイヤの安定感と地面の凸凹を吸収するしなかやかクッション。道路にある多少の段差なら軽々と乗り越えていきます。ファットバイクは街乗りでも楽しい自転車なのです。

「すごいなぁ。なんか楽チン」

 ファットバイクでサイクリングスタート
ファットバイクでサイクリングスタート

今回のコースは小鳴門海峡、スクノ海、ウチノ海の海岸線を走って大毛島の南半分を周るコース。小鳴門海峡では今でも渡船(とせん)が現役と聞いて、渡船に乗れるコースを考えてもらいました(地図参照)。

HORIZONでは基本のコースがいくつかありますが、お客様の希望に応じてコースを考えてくれるのでぜひ相談してみてください。

 こんなトンネルをくぐったり
こんなトンネルをくぐったり
 昔の街並みが残る細い路地を走ったり
昔の街並みが残る細い路地を走ったり

島を南下すると小鳴門海峡に出ます。
最初の見所は小鳴門橋と神戸淡路鳴門自動車道が通る撫養橋(むやばし)の下を走る道。真下から見上げる橋は迫力満点です。

 手前から撫養橋と小鳴門橋
手前から撫養橋と小鳴門橋
 海岸線の道は車は通れない。自転車ならではの楽しみ
海岸線の道は車は通れない。自転車ならではの楽しみ

大毛島と四国本土の間に位置する小鳴門海峡。1961年に小鳴門橋が開通するまで、大毛島から四国本土に渡る手段は船しかありませんでした。そこで活躍したのが渡船。人々の日常の足として無くてはならない渡船は今も現役です。元々は民間の業者が有料で運行していましたが、鳴門市が引き継ぎ、現在は誰でも無料で乗ることができます。

 この桟橋の先端が高島の渡船乗り場
この桟橋の先端が高島の渡船乗り場
 やってきたのは可愛い渡船。地元の高校生がいっぱい
やってきたのは可愛い渡船。地元の高校生がいっぱい

美しい桟橋の上にある高島の乗り場で待っていると、小さな船がやってきました。船上には地元の高校生がいっぱい。みんな自転車を持っています。この渡船は自転車もバイクも無料で乗れるのです。

 渡船に乗り込むと旅の気分が盛り上がる
渡船に乗り込むと旅の気分が盛り上がる

渡船に乗り込んだ3人。美しい風景にカメラを向けていると、わずか2分ほどで対岸に到着。

「あー、もう少し乗っていたかった」

こちらの渡船、昼間は1時間に1本くらいしか運行していません。帰りは全長530メートルの小鳴門大橋へ。橋の上まで登るのにはちょっと苦労しますが、歩道もあるので自転車でも安心して走れます。

 空中散歩の気分が味わえる小鳴門大橋
空中散歩の気分が味わえる小鳴門大橋

大毛島に戻ってガイドの尾崎さんが自転車を止めたのは古い屋敷跡。ここは福永家(ふくながけ)住宅と言われる塩田の跡。かつてこの周辺は海水から塩を作る塩田が広がっていたそうです。

 福永家住宅塩田屋敷。煙突が見える建物が塩水を煮詰めた釜屋
福永家住宅塩田屋敷。煙突が見える建物が塩水を煮詰めた釜屋

福永家住宅を後にして小鳴門海峡の海岸線を北上するとウチノ海にでます。穏やかな海を望む『鳴門ウチノ海総合公園』は広い芝生や子供向け遊具、バスケットやテニス、フットサルなどができるコートがあり、スケボーやロッククライミングまで楽しめる人気のスポット。入場料は無料。なんと、バーべキュースペースも無料で利用できるそうです。

 ウチノ海総合公園の海岸線。自転車も気持ちよく走れる
ウチノ海総合公園の海岸線。自転車も気持ちよく走れる

たっぷり2時間、サイクリングを楽しんでそろそろお腹も空いてきました。ウチノ海、スクノ海の海岸線を走ってラストスパート。大毛島のサイクリングの魅力は、この海岸線に沿った道でぐるっと島を周れること。そして冬場なら観光客の車はほとんど走っていません。安全で快適なサイクリングが楽しめるのもオフシーズンならではの魅力です。

 海岸線に沿って大毛島を半周。ほとんど車とは出会わなかった
海岸線に沿って大毛島を半周。ほとんど車とは出会わなかった

たっぷり体を動かしたあとは
冬の味覚 牡蠣を食べ放題

カヤックを1時間、サイクリングを2時間楽しんだら、すっかりお腹も空いてちょうどお昼時。大毛島の冬の味覚は何と言っても牡蠣(かき)です。ウチノ海で育った牡蠣を存分に味わえるのが、ずばり『かき焼き うちの海』。

 牡蠣棚が並ぶウチノ海の目の前にあるお店
牡蠣棚が並ぶウチノ海の目の前にあるお店

目の前の海で養殖した牡蠣が食べ放題というこちらのお店。完全予約制で、お値段は90分 大人2500円(子供1250円、幼児500円)。お店でジュースやお酒も販売していますが、飲み物の持ち込みも自由なんです。

店内の席の前には巨大な鉄板。そこにスコップで豪快に牡蠣を投入。天井から降りてくる鉄の蓋を閉めて蒸し焼きにします。待つことおよそ15分。

 鉄板からは美味しそうな香りが。待ちきれない!
鉄板からは美味しそうな香りが。待ちきれない!
 鉄板が開くとそこには一面の牡蠣が現れる
鉄板が開くとそこには一面の牡蠣が現れる
 軍手とナイフを使って殻を開ける。中からはふっくらと輝く牡蠣の身が
軍手とナイフを使って殻を開ける。中からはふっくらと輝く牡蠣の身が
 口の中でとろける甘み。生きてて良かった!
口の中でとろける甘み。生きてて良かった!

蒸し焼きにした牡蠣の身はぷりぷりと輝いています。口に入れると爽やかな甘みが広がります。

「これぞウチノ海の恵み!」

店員さん「これでだいたい140個くらいかな。1人平均60個くらいは食べるから、もう一回は焼かなあかんね。牡蠣の炊き込みご飯と味噌汁もついてるけど食べますか?」

 牡蠣の炊き込みご飯とお味噌汁も食べ放題
牡蠣の炊き込みご飯とお味噌汁も食べ放題
 2度目のかき焼きも完食。3人とも大満足
2度目のかき焼きも完食。3人とも大満足

3人に今日の感想を聞いてみました。

「身近もこんな楽しみがあるなんて、意外と気づいてなかったなぁ」
「鳴門の面白さ、たくさんの人に知ってもらいたいですね」
「帰ったら友達に言いふらしますよ」

シーカヤック、サイクリング、かき焼き。鳴門の海にはいろんな楽しみがつまっています。仲のいい友達やご家族で、ぜひ一度体験してみてください。

最後に忘れてはならない大切な情報を。
『かき焼き うちの海』の営業は11月から3月末までです。
冬しか味わえない海の恵み。アウトドアスポーツと一緒にぜひどうぞ。

Information

シーカヤック&サイクリング
HORIZON(ホライゾン)
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦黒山246-29
090-3782-4250
営業時間 9:00〜19:00
定休日 不定休
【半日・約3時間】シーカヤック&サイクリングツアー 1人8000円(税込)〜
※ カヤックのみ、サイクリングのみのツアーも可能
※ ツアー内容はご相談ください
※ 今年からSUP(stand up paddleboard)のツアーも始めました
※ 天候などによりツアーが中止になる場合もあります


かき焼き うちの海
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字大毛243-1
088-687-1361
https://www.kakiyaki.jp/
営業時間 11:00〜21:00(完全予約制)
定休日 毎週月曜日(4月〜10月末までは休業。HPでご確認を)
【牡蠣無制限!食べ放題90分】大人2500円、子供1250円、幼児500円、3才未満無料(牡蠣の炊き込みご飯、味噌汁付き)
※ ジュース、酒類などの持ち込み自由
※ 調味料などの持ち込み自由


渡船について
https://www.city.naruto.tokushima.jp/kurashi/sumai/kotsu/tosen/


鳴門ウチノ海総合公園
徳島県鳴門市鳴門町高島字北679番地
088-687-3175
https://www.uchinoumipark.jp/

シーズンオフこそオススメ
冬の鳴門でアウトドアを楽しもう! 記者

Text 仁木啓介
兵庫県出身。1967年生まれ。東京でテレビ番組のディレクターとしてドキュメンタリーやドラマを制作。MBS『世界ウルルン滞在記』では世界各地の秘境を巡る。取材で訪れた徳島県上勝町に一目惚れして2012年に移住。映像制作とバー、グランピングの経営をする(株)上勝開拓団を起業。趣味は里山歩き。